東京都の空き家問題を調査している、立教大学社会学部4年 小針 楓太(こばり ふうた)さんより、自治体と市民団体の空き家問題への取り組みの役割分担や協同について、オンラインインタビューを受けました。
NPO法人日本バイヤーズ・エージェント協議会の代表理事として、調査に協力し、以下、お話しさせていただきました。
私ども法人及び、正会員の経験と活動が、次世代を担う大学生の空き家問題への関心、研究、調査のお役に立てることを願っております。
1)法人の取り組みについて
1.オンラインお話し会
Zoomを使って、オンラインで正会員が活動事例を発表し、市民の皆様に情報共有
・長野での空き家バンクの取り組み
・岐阜での古民家を活用した取り組み
・東京での中古住宅を活用した取り組み
2.空き家活用チャレンジプログラム
実際の空き家を視察し、計画を立て資金を集め、修繕しながら活用する長期プログラム
・昨年、千葉県東金市の中古住宅を視察した事例
廃屋化が深刻な為、計画で保留している状態。
実際にこの物件を空き家バンクに登録するかも含め検討中。
3.都内で実際の空き家を事務局として活用
代表理事の家、事務局は、昭和時代の元薬局の中古店舗居宅。荷物(残置物)在りで片付けはやりますと交渉して、譲ってもらった。一階の倉庫や三階の屋根裏部屋は、荷物が大量に残っているが、お風呂やトイレ、台所などそのまま使えたので、ありがたく使っている。一時期は、近所の子供達に開放してアトリエもしていた。うちの事務所そのものが、空き家活用である。
2)自治体や民間企業との連携における困難
現時点は、自治体、民間企業とはまだ連携していない。紹介に限っている。
代表として各地を視察してきた経験を踏まえ、以下にまとめる。
自治体が明確な方向性を出すことで、役割分担が明確になり、連携は可能である。
★よくある連携が難しいケース
不動産屋がない、または極端に少ない地域。空き家はあるけど、すぐに貸せない売れない状態。重要なサポート【不動産屋】【空き家バンクなどの空き家活用】の連携まで出来ていない。
民間:資源や強みを活かしてイベントなど、地域おこし協力隊などの現場は動いているが、肝心の部分が進んでいかない。
自治体:古民家のお試し居住、ワーケーション、ファミリー世帯の移住獲得目指す。
しかし実際の地域の空き家は登録されないし減っていかない。
★よくある連携が進んでいるケース
まちぐるみで自治体と民間が協力して移住と空き家活用に積極的。
自治体:地域資源を活用して、古民家やキャンピングカー、クラインガルテン(年契約の農業体験できる別荘)などのお試し移住体験住宅で若者、旅行、テレワーク、ワーケーション、ファミリー世帯などを誘致。地域おこし協力隊も公務員なので、家探しまでサポート。
民間:まちの不動産屋が連携し、積極的に空き家登録し、修繕もまちの工務店。賃貸や売買もまちの不動産屋の賃貸や売買契約、売上につながる。
3)直面している問題
「空き家を活用し、空き家問題を解決するというゴール」に向かって、協力しあえるお互いの調和点が不明瞭
1.自治体と民間の一致のズレ
自治体⇨人集めと空き家問題どうにしかしてもらいたい⇨「どう」の部分が明確になっていない
民間⇨「どう」を考えて実行したいが、資金の問題が(運営費⇨国/購入賃貸費⇨お客様)
2.所有者と民間と自治体のズレ
空き家活用=実際の空き家の所有者にメリットが少ない
⇨貸すのに抵抗がある。負荷が大きすぎる。
・荷物が大量にある、汚い、壊れたまま⇨掃除、片付け面倒/時間・お金がかかる
・すぐに売れるわけではない⇨空き家バンクに登録する(空き家活用)にメリット、魅力があると思えない。
4)民間団体としての強み・弱みについて
【弱み】健全な事業運営が大前提なので、どうしても売上確保が優先してしまう。結果、プライベートなことや、細々としたことに踏み込んで進められない。
【強み】それぞれの専門分野で相互協力できる基盤を作れれば、互いの利益と自治体のゴール(空き家活用、空き家問題の解決)に繋げられる可能性がある。
【弱みは強み】いかに信頼できる企業、団体、人と繋がれるか。
⇨空き家の所有者も、空き家を活用したい人も含む
⇨不動産屋、工務店、古物商、掃除業者、解体業者、司法書士、行政書士などなどが、自治体の目指すゴールを共有理解し、相互協力をする、所有者に対して善意をベースにした連携(自社の利益追求を最優先しないこと)が必要
⇨所有者の負担が減る工夫/気持ちよく空き家活用できる仕組みづくり
⇨結果、市民のため、自治体のため、空き家問題解決になる
⇨結果、自分たちに返ってくる(民間企業や団体)
5)今後、空き家問題解決に必要とされるもの
本当に空き家なのか、調べること。所有者にとっては、【大切な財産】である。荷物置き場として自己使用・家族が集まる時に使おうと残しているケース多数。
今までは、働けば、お金が入って豊かになるという観念が主流であった。そのため、皆、高額で家を買い、土地を買い、物を溜めてきた。愛する大切な人達、家族のためであり、高額で売る、自分自身のためでもある。所有者は、財産は、家族が使ってくれる。もっと高額で売れると信じているから、手放さない。
しかし、家族や残った人が相続し、後始末するのは、時間とお金、相当の負荷がかかる場合が非常に多く悩みは大きい。
人は、歳を重ねると、動ける範囲が少なくなっていくことが自然である。どの年代も、生活が最優先であり、興味がない、メリットがない、やりたくないことは、【面倒くさい】と避け続け、一番後回しにする傾向があるのは、非常に当然なことである。
以上を踏まえた上で、これからは、今使わないものは、次に使ってくれる人に譲ろう、使って活用してもらおう。全部直さなくても良い、全部捨てて、全部綺麗にしようとしなくて良いんだ。一部で良い、それでも使いたいという人に活用してもらおう。…のような、わかりやすく目に見える具体例が増えることで、軽やかな発想が現実的になると考えている。
使っていない自転車がある。友達が貸して、というので貸してあげる。終わったら満足して、友達が返しに来る。「ありがとう」お土産にお茶菓子を買ってきてくれた。…このくらい身軽なイメージ。
問題ではない。重くない。面倒ではない。
人が住んで暮らしを営んできた、大切な財産だったのだ。空き家活用とは、軽やかな気持ちで誰でも出来る、自転車に乗るくらい当たり前!ただし固定資産税は課せられ、維持費が必要なので、一定期間に限定した、相当の使用料は頂戴する(または等価交換)約束を交わし、その約束事をきちんと守ることが出来る誠実な人や企業や団体に
「シェアする(どうぞ役立ててください)」
「空き家(空間)を活用して循環させることで互いの価値(空き家と使用者の活動)を高める」
という発想の変換を経て、様々な専門家、プロが間を取り持ち、役割分担、分業していく仕組みを整えることで物事が進み、自治体、地域の空き家問題が進んでいくだろう。
「お役に立てて嬉しいです、ありがとう」そんな空き家活用が自然になることを、目指す。
NPO法人日本バイヤーズ・エージェント協議会
代表理事 草栁ちよ子(安子)
2022年6月8日
【追記】
バイヤーズ・エージェントとは、海外における不動産取引(日本の弁護士)のような、土地や家を買いたい人の希望や経緯を伺い、それぞれの各事業、活動経験を活用して、お調べしたり、法的・中立的・客観的な見解を伝え、当人に不利益や事故がないよう、トラブルを未然に防ぎ、信頼関係の元、契約や約束事が進んでいくことをサポートする関係性のことです。
私達は、自ら主体的に、誠実で、安心、安全な取引を心がけ、信頼できる専門家、業者、企業を選びましょう。ということを一般市民の皆様にお伝えするのが、NPO法人日本バイヤーズ・エージェント協議会の活動理念です。